始めに
オーブリー=ビアズリー「サロメ」解説を書いていきます。
背景知識、伝記
アール=ヌーヴォー
ビアズリーの位置するジャンルのアール=ヌーヴォーは、中世美術を参照しつつ、手工芸としてのアート、洗練されたフォルム、自然に対する研究などを志向する潮流です。
理論的先駆はヴィクトリア朝イギリスのアーツ・アンド・クラフツで、ウィリアム・モリスやジョン・ラスキンらは、中世のギルドに着目したり自然に着目したりして、産業化にあらがって、身近なものの美的な価値を再生しようと図りました。
イギリスはアール=ヌーヴォーの先駆となり、オーブリー・ビアズリーによるオスカー・ワイルド『サロメ』の挿絵である本作は、このジャンルの代表作です。
デフォルメされたフォルム
ビアズリーはアール・ヌーヴォーを代表する画家として、多くの作品を手がけました。
本作も有名ですが、その特性はデフォルメされつつ端正で洗練されたフォルムです。ワイルド『サロメ』はモロー「出現」から刺激されて描かれたことが知られますが、モローの古典主義、象徴主義的な世界と比べると、ずっと少ない線で、端正にサロメの物語の印象的な場面を捉えています。
絵画世界
作品内容
聖書の登場人物サロメが、洗礼者ヨハネの生首を手にしている様子を描き、ワイルド『サロメ』のクライマックスの部分です。『サロメ』マタイによる福音書とマルコによる福音書に語られているエピソードを下敷きにします。
『旧約聖書』において描かれるのですが、へロデ・アンティパスの誕生日の祝宴で、サロメ王女は王とその客の前で踊る。王はこれに大変喜び、サロメの望むことは何でも与えると約束します。ヘロデとの私生児であるとして洗礼者ヨハネに追及された母ヘロディアに唆されて、サロメはヨハネの首を皿に載せて要求します。ヘロデは後悔しながらも、出席者全員の前で約束を守らざるを得ず、サロメの要求に応じました。洗礼者ヨハネは斬首され、その首は皿に載せられてサロメに渡され、サロメはそれを母親に渡しました。
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